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宇宙創世記

まだ宇宙が生まれてまもない時の話である。藤田亜廉が闇で覆い尽くされた何もない宇宙を訪れた。宇宙の様子を退屈に思った藤田亜廉が片手を思い切り握ると、手のひらに小さな石ころが生まれた。これが星の誕生である。その後石ころは時間をかけ今の地球になったという。

その小さな石ころが膨張し、燃え上がり、何千年も経た後に冷えて固まり、宇宙の中で唯一無二の存在として浮かび上がる。藤田亜廉はその成長を見守りながら、石ころが育つ過程を理解し始めた。彼はこの星に命を吹き込む力を感じ、ふと不安を覚える。

「果たして、命が宿るとはどういうことなのか…?」

亜廉の心に疑問が生まれたとき、石ころは無数の亀裂を裂け、その中から青い光がこぼれ始めた。その光は、やがて大気となり、水となり、植物が生え、動物たちが現れるまでに至る。

亜廉はその成長を見守るうちに、ふと気づく。彼はただ星を作ったわけではなく、星に息吹を与え、そして命を導いた存在となったのだ。彼の目の前に現れたのは、生命を宿すための無限の可能性だった。

星の上では、命が繁栄し、文明が発展し、数多の種が現れ、消えていった。そして時が流れ、藤田亜廉の目の前に新たな存在が現れる。その存在は、藤田亜廉を試すかのように言う。

「あなたが生んだ命には、必ず終わりが訪れることを知っているか?」

亜廉は無言でその問いを受け止め、目を閉じて深く考えた。

その存在は静かに待ち、亜廉はしばらく答えることができなかった。星々の誕生と成長を見守ってきたが、命の終わりという概念に対しては未だ答えを見つけられずにいた。

やがて、亜廉はゆっくりと目を開け、心の中でひとつの答えを見つけたかのように言った。

「終わりがあるからこそ、命は輝くのだろう。無限に続く命など、きっと意味を成さない。」

その言葉を聞いた存在は、満足そうに微笑んだ。

「その通り。命は有限であるからこそ、その一瞬一瞬に意味があるのだ。お前はそれを理解した。」

そして、その存在は亜廉にひとつの選択を与えた。

「お前が生んだ星には、今後も命が生まれ、消えていくだろう。それを見守ることもできるし、すべてを終わらせることもできる。選びなさい。」

亜廉は再び深く考えた。無数の命が生まれては消える。そのサイクルを見守り、導くのも一つの道。しかし、全てを終わらせるという選択には、大きな責任が伴う。

「私は…」

亜廉は静かに手を差し伸べ、目の前の星々を見つめた。

「私は、この命を見守り続けたい。終わりがあってこそ、そこに意味が宿る。その瞬間まで、すべてを見届けたい。」

その言葉と共に、亜廉の目の前に広がる宇宙は、さらに輝きを増した。星々がきらめき、命が息づき続ける。宇宙の中に、亜廉の意志が刻まれた瞬間だった。

それから長い年月が過ぎ、亜廉は宇宙のすべての命を見守り続けた。そして、やがて新たな命が誕生し、成長し、また次の世代へと受け継がれていく中で、亜廉はひとつの真理に気づく。

「命の終わりは恐れるべきものではない。それは次の始まりの合図に過ぎないのだ。」

亜廉の目の前に広がる宇宙は、無限の可能性を抱えて輝き続けていた。

亜廉はその広がる宇宙をじっと見つめながら、心の中で深く息を吐いた。命の始まりと終わりを見届けることこそが、この無限のサイクルを愛し、受け入れることだと感じた。そして、ふと静かな決意が胸に湧き上がる。

「すべての命は一つの輝きであり、いずれ消え去るもの。それが本当に美しいのだ。」

その時、亜廉は手を広げ、宇宙のすべてを包み込むように感じた。星々が光り輝き、流れるような時間の中で、彼は静かに微笑んだ。命が流れる川のように、始まりも終わりも、すべてがひとつの美しい流れだと。

やがて、星々の光は一層深い静けさの中に溶け込んでいった。宇宙はその姿を変え、また新たな命を宿す準備を整えている。亜廉はその全てを見守りながら、何も言わず、ただ静かにその流れに身を任せた。

そして、宇宙は穏やかに息をひそめ、すべての命がその意味を知っているかのように、静かに進んでいった。

その瞬間、亜廉は深く感じた。終わりがあるからこそ、すべての命には意味がある。そしてその意味が、永遠に輝き続けることを信じて。

物語は静かに幕を閉じ、宇宙の広がりの中で、亜廉の意志が静かに息づいている。

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  1. kアリーナ
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